自然の声が聞きたくて
野宿を続け林道を走り続けた
自然は今何を語ろうとしているのか
何を私たちに訴えかけようとしているのかを
聞きたくて、感じたくて
もっと広く、もっと大きな自然を
もっと近く、もっと深く
自分という存在の
なんて小さくはかないかを



いくつかの峠を越えると
小さな草原があった
ゆっくりと空気が行き過ぎて
光が風にはじけて飛んだ
光は私の味方だろうか
風は私と友達になれるだろうか
あらゆる季節の
あらゆる天候の中に身を置くこと
自然に、あくまで自然に生きること
それができなければ、旅は続けられない
人間は山を崩し、木を切り
川の流れをせき止めてきた
けれども、山には山の
川には川の意志がある
季節の移ろいは、山や川や海の感情
その激しいばかりの感情の吐露を私は聞いた
尾根を包みこんでいた霧が駆け抜け
流れてゆく、淡いちぎれ雲



木漏れ日の揺れる森が、突然の闇になる
急に重みをました冷たい空気
水しぶきが散った
駆け抜けて、再び光の中へ
もう一度、緑の森の中へ
走り去ることで何かを求めようとする
求めれば求めるほど、走れば走るほど
何かを得ようとする力が強ければ強いほど
より冷静に、より平静に、より謙虚になっていく
そして余計なものが洗われてゆく
生きるために、旅をするために
必要なものと、必要でないものと
何が必要で、何が必要でないかが
少しずつ見えてくる
だから旅をする
だから走る



空は多くのことを知っている
無限とも思える大気、果てしなき広がり
朝露に光る地平の向こうから
かすかに鳥たちの声が聞こえてくる
ふりそそぐ陽光が風に揺れた
いったいどこまで走り続ければいいのだろう
空は教えてくれる
高く雲がわき上がり
視野に気まぐれな陰を落としていく
そして冷たい雨をぶちまける
見る見るうちに原野が冷えていった



夕日を追いかけた
夕焼けが見たかったから
夕焼けを見ながら
今日一日を終えたかったから
夕焼けとたき火を一緒に酒を飲みたかったから
光は、さまざまな色で
さまざまな形を織り上げる
音はない
光は踊る
ゆっくりとそして確実に
夜はひたひたと忍び寄ってくる
太陽が落ちた
夕焼けは終章に向かってさらに激しく
さらに静かに踊り始めた
満天は、オレンジ色に染めあげられてゆく
この喜びを誰に伝えたらよいのだろうか
誰にも伝える必要はない、自分だけのものにしてしまえ
けれども自分だけのものにするには
あまりに大きく美しすぎる
今、自分だけの夕焼け
ひとり旅